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フッサールからの影響
Posted: 2024年11月14日(木) 01:00
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フッサールからの影響
Re: フッサールからの影響
Posted: 2024年11月15日(金) 10:55
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ハイデガーに対するフッサールの影響
1. 序論
マルティン・ハイデガー(Martin Heidegger, 1889–1976)は、エドムンド・フッサール(Edmund Husserl, 1859–1938)の現象学から多大な影響を受けました。フッサールは現象学の創始者として「意識の現象」を徹底的に探求し、哲学を「厳密な科学」とすることを目指しました。一方で、ハイデガーはフッサールの方法論を基盤にしながらも、その枠組みを超えて存在論の新たな地平を切り開きました。本論では、フッサールからハイデガーへの主要な影響とその哲学的展開について考察します。
2. フッサールの現象学とその基本概念
2.1. 「事象そのものへ」
フッサールの現象学は、「事象そのものへ」というスローガンを掲げ、哲学を先入観や前提から解放し、意識の現象そのものを精密に記述することを目指しました。
2.2. 現象学的還元
エポケー(判断停止):
日常的な先入観や自然的態度を保留し、意識の働きそのものを対象化する方法。
現象学的還元:
外界の事物ではなく、それがどのように意識に現れるか(現象)を探求するための手段。
2.3. 意識と対象
フッサールは、意識を「意向性」を持つものと定義。意識は常に何かに向かって働く性質を持ち、対象との関係性がその本質を成すと考えました。
3. ハイデガーへの影響:現象学から存在論へ
3.1. 方法論の継承
現象学的手法の採用:
ハイデガーは、フッサールの現象学的手法を「存在の問い」に適用。
「事象そのもの」を探求する現象学の精神を受け継ぎ、存在者(具体的な物事)の背後にある「存在そのもの」を問う方法論を構築。
エポケーの再解釈:
フッサールのエポケーを基盤としつつ、日常的な存在者の理解を棚上げし、それらがどのように存在するかを明らかにしようとした。
3.2. 「意識」から「存在」への転回
フッサールが意識と対象の関係を中心に考えたのに対し、ハイデガーは「存在」そのものの意味を解明する方向へ転回。
意識の働きや構造ではなく、存在者が「存在する」とは何を意味するのかを哲学の中心的テーマとした。
4. フッサールとの違い:存在論的な革新
4.1. 意識中心主義の批判
フッサールの現象学は、意識を中心に据えて世界を考察するものでしたが、ハイデガーはこれを「主体中心的」であると批判しました。
ハイデガーは、人間を「現存在(Dasein)」として定義し、存在そのものを探求する枠組みに転換。
4.2. 現象学的還元の拡張
ハイデガーの「存在論的還元」:
現象学的還元を「存在者から存在への還元」に再解釈。
存在者を単なる客体ではなく、存在の意味を開示するものとして理解。
4.3. 世界内存在の概念
ハイデガーは、人間を孤立した主体ではなく、世界の中で他者や環境と関係性を持つ「世界内存在」として捉えました。
これにより、存在は単なる意識の産物ではなく、人間と世界の相互作用の中で明らかになると主張。
5. フッサールの影響の具体例:『存在と時間』
5.1. フッサール的要素
『存在と時間』は、フッサールの現象学を基盤とし、「現象」がどのように現れるかを問う方法論を継承。
現象学的還元の精神は、存在論的問いへのアプローチに反映されています。
5.2. 独自の展開
現象の解明を超えて、「存在そのもの」の解明を哲学の中心課題とした点でフッサールの枠組みを超越。
存在の忘却、西洋哲学の伝統批判、時間性の探求など、ハイデガー独自のテーマが展開されました。
6. フッサールからハイデガーへの影響の意義
6.1. 現象学の発展
ハイデガーは、フッサールの現象学を発展させ、「存在論的現象学」という新しい哲学の分野を切り開きました。
6.2. 哲学史への貢献
フッサールの意識哲学を基礎に、存在論的探求を再興させたことで、西洋哲学の根本的な転回をもたらしました。
6.3. 後世への影響
ハイデガーの思想は、実存主義、ポストモダン哲学、解釈学など、20世紀以降の多くの哲学的潮流に影響を与えています。
7. 結論
マルティン・ハイデガーは、エドムンド・フッサールの現象学から深い影響を受け、その手法を存在論へと発展させることで哲学史に新たな地平を開きました。フッサールの「事象そのものへ」という理念を受け継ぎつつ、「意識」ではなく「存在」そのものを問うことに注力した点で独自性を発揮しました。この哲学的革新は、現代哲学の基盤を形成し、哲学のみならず人文学全体に持続的な影響を与え続けています。